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Soren no tachiba. Detanto no hokani michi wa nai (The Sovjet viewpoint. No alternative to detente) (1983)

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Soren no tachiba. Detanto no hokani michi wa nai (The Sovjet viewpoint. No alternative to detente)

(1983)–Georgi Arbatov, Willem Oltmans–rechtenstatus Auteursrechtelijk beschermd

Vorige Volgende

6 近くて安全な道

- いろいろな軍縮交渉の現状をどう評価しているか。

A 一九七九年以前に始まったソ米両国の二国間交渉は、ほとんどすベてが事実上の凍結状態になっている。これは、最近のアメリカの政策変更がもたらした必然的な結果であり、政策変更の中身の一部分だったとさえいえる。

- またもやアメリカに対する非難のようだが。米国を弁護するつもりはないが、どうしてソ連側には非難される点はないのか。交渉対象の複雑さに根ざした困難もあるのではないか。

A そのような困難が存在することは疑いない。時にはそれが交渉の妨げとなり、新たな摩擦の原因にさえなる。私が念頭においている困難とは、最新技術の複雑さから生じる問題、検証などに伴う問題、それに地理的、政治的情勢の違いから生じる問題などである。

それに、最後に、しかし決して重要性が低いというわけではないが、長期間の緊張から生じた相手への疑惑の念も、非常な難問である。また、交渉では、相手の立場を読み違えるという間違いを必ず犯すものであることも付け加えておきたい。この点については、ソ連がもう少しうまく、効果的にことを進めてもよかった場合が過去に何度かあったことを率直に認める用意がある。こうした困難を過

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小評価すべきではないが、これが問題の中心ではない。

最大の問題は、ソ連から見るかぎり、アメリカとNAT0が依然として対ソ軍事優位を追求し、それを実現するため、このところ軍拡競争に拍車をかけているということである。こういう政策をとれば、交渉を成功させ、軍備制限の合意を成立させる余地はなくなる。

その責任はすペてソ連にあるというのだろうか。もちろんそうだというのだ。ソ連はこの地上に存在するというただそれだけで、また独立国家として存続を望んでいるだけなのに、それだけの理由で責任を問われている。ソ連がアメリカの軍事優位を許さず、軍事均衡と対等な関係を主張しているとして責任を問われている。ソ連が、アメリカとその西側同盟国の優勢な軍事力に屈して情けを乞うことをせず、一方的な譲歩をしないといって責任を問われている。

西側諸国は、ソ連のこのような態度を重大な間違いだと考えるのかもしれないが、どんなに説得されても、ソ連がこうした態度を変えることはありえないと思う。

米政権三代にわたるSALT

- 今のような見解は、あまりに断定的で独善的と思われる。最も重要な米ソ交渉を取り上げて具体的な分析してみてはどうか。

A もちろん結構だ。SALT交渉から始めよう。

SALTの最も新しい合意は一九七九年六月に調印されたが、アメリカはこれまでのところ、この合意を批准していない。その責任はソ連、特にアフガニスタン事件にあると非難する人もいるかもしれない。しかし当時アメリカでは、大統領選挙がまだ本格化しない一九七九年中に批准を終わらせるべきだというのが有力な意見だった。しかし、そうはならなかった。

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その責任は全面的にアメリカ政府にある。というのは、第一に、アメリカ政府はキューバに旅団規模のソ連軍が駐留していると言い出して似非キューバ危機を引き起こし、次に、イランの大使館占拠事件が起きたため、SALT条約のことなどすっかり忘れてしまったからだ。

したがって、仮にアフガニスタソ事件が起きなくとも、SALTII条約は八〇年中には批准されなかったのではないかと、私は考えている。しかし問題にそれだけではない。SALTIIの交渉が、七年間もかかった責任はアメリカにある。もしこれほど遅れなかったら、今ごろはSALTIIIあるいはSALTIVの交渉にさえ入っていたかもしれない。

もしカーター政権の政策が、あれほど一貫性を欠いたあいまいなものでなかったら、SALTII条約の上院での批准審議はそんなに紛糾しなかっただろう。一九七七年の時点でも、だれ一人、あれほど紛糾するとは予想しなかっただろう。

- そして、ソ連はいま、一九八〇年の大統領選挙でSALTII条約を反古にする、あるいは少なくとも交渉をやり直すと公約した新政権を相手にしなければならない。

A レーガン政権の登場で、われわれは再び新たな事態を迎えたが、ここではアメリカの政策の一貫性が問題になっている。

ソ連側に言わせてもらえば、ソ連はSALTII条約をまとめるため誠意をもって二クソン、フォード両共和党政権、それにカーター民主党政権と三代にわたって交渉をしてきたし、現在でもこの条約をよくできた内容の合意だと考えている。しかし調印以来、時間がたってしまったため、新たな交渉の必要が生まれている。付属議定書の有効期間はすでに失効してしまったから、議定書で合意されていた内容については新たな取り決めが必要である。SALTI条約は期限切れで失効し、SALTII条約は批准されていないが、 両国はいまのところ、

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両条約を順守している。しかし、このような状態を永久に続けるわけにはいかない。何らかの有効な正式合意を結ばなければならない。

- もう一度SALTIIに話を戻すと、SALTIIの交渉では、ソ連よりアメリカのほうが大きく譲歩したという見方がもっぱらだが。

A そんな見方をする人が多いのは、SALTII反対派の間だけだろう。

- では、実際はどうだったとみているのか。

A SALTII条約は、双方が同じように譲歩し合った結果まとまったものだと思う。ソ連の国益という観点からいえばもっと有利な条約がありえた。これはアメリカにとっても同じことがいえるだろう。

このような条約を結ぶ場合、双方がお互いに譲歩するのが原則であり、これは当然のことだ。しかし国家の安全保障ということからいえば、このような条約がまったくないよりは、あったほうがましである。ソ連にとっても、アメリカにとってもそうだし、このことは米国防総省でさえ認めている。世界全体の安全保障にとっても同じことがいえる。

SALTとはそもそも何なのかということが、しばしば忘れられがちである。一国の安全保障を損なうことなく戦略核戦争や戦略計画を削減ないし制限する可能性を追求することは、本来、譲歩ではなくて利益であり、敗北ではなく勝利である。

レーガン再開案の内実

- レーガン政権は一九八二年四月に、戦略兵器をめぐる交渉の再開を提案した。今回は戦略兵器を単に制限するのではなく、削減することを目標としている。ソ連はこの提案の内容を痛烈に批判したが、交渉再開には応じた。米ソ両国は現在、どのような姿勢でこの問題に

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臨もうとしているのか。

A アメリカが交渉再開を決定したこと自体は、レーガン政権の政策が健全な方向に転換したことを意味する。ソ連はレーガン政権に対しかなり前から、交渉再開に応じるよう求めてきた。

レーガン大統領は、交渉の呼び方をこれまでのSALT(戦略兵器制限交渉)からSTART(戦略兵器削減交渉)に変えることを提案した。名称について議論してもほとんど意味がない。というのも特に、ソ連はこれまでつねに戦略兵器を削減する考え方を歓迎する姿勢を示してきたからだ。もしSALTII条約が批准されていたなら、ソ連のミサイルは現在より二五四基少なくなっていたはずであり、アメリカも三四基少なくなっていたはずである。

また両国は、SALTII条約調印の際の合意に従って、双方の戦略兵器を大幅に削減するためのSALT皿を開始し、かなり交渉が進展していたはずである。ところがいま両国は、名称がなんであっても、再開された交渉での相手国の立場をめぐって、もっと深刻な問題に直面している。

この点でアメリカの提案の中身は、実質的な内容のある合意を成立させたいという表向きの発言とは裏腹に、一方的にアメリカに有利なものになうている。マスキー元国務長官はこの提案を「軍縮の理念を放棄し、無意味な対ソ軍事優位の追求をひそかに狙った案」(インターナショナル・ヘラルド・トリビューン、一九八二年五月一四日)と極めつけたほどである。

具体的にいえばアメリカは、両国の戦略兵器の構成が違っていることをうまく利用して、自らの戦略核戦力についてはほぼ手つかずのまま現状を維持しながら、ソ連の主力である地上配備ICBMの戦力を大幅に削減するような提案をしている。もしソ連が米提案をそのまま受け入れれば、ソ連は地上配備のICBM搭載弾頭の半分近くを削減しなければならないが、アメリカは核装備潜水艦隊のうち時代遅れになった一部を削減するだけでよく、ICBMの数を増やすことさえできる。また、アメ

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リカが機数でかなりの優位に立っている戦略爆撃機にはまったく手をつけていない。

米提案では、アメリカは最新の第一撃兵器体系であるトライデントII型ミサイル、MXミサイル、新戦略爆撃機、それに戦略巡航ミサイルを自由に開発し、配備することもできる。言い換えると、米提案はソ連に対して一方的な軍縮を迫り、ソ連がこれまでに注ぎ込んだ軍事費の価値を減少させることを目的としているように見受けられる。その一方で、アメリカの軍事力増強には実質的に何の制限も加えていない。

- しかし、アメリカは、ソ連のICBMが戦略的な安定を脅かす最も深刻な脅威だとして、その削減に重点をおくのは正当だと主張しているが。

A そういう議論は通用しない。この議論の根底にあるのは、命中精度の高いICBMが対戦力攻撃あるいは先制第一撃に適しているのに対し、SLBMや戦略爆撃機、巡航ミサイルは主として第二撃、つまり報復攻撃用だという古くからのアメリカの考え方である。

そういう考え方は、一九六〇年代に生まれたものだが、正確な計算の結果というよりは、その時点までにアメリカが築いてきた戦略核戦力に合理的な理由づけをするために生まれたものである。細かく見れば、アメリカがおかれた戦略地政学的な位置の特徴を反映したものであり、さらに、アメリカ陸、海、空軍が激しい縄張り争いをした結果でもあった。

いずれにしても、ソ連はこのアメリカの考え方を絶対的な真理と受け取るわけにいかない。ソ連は歴史が違うし、戦略地政学的な位置も違う。またアメリカとは違う兵器体系を持ち、軍の構成も異なっている。

こういう違いがあるのは当然のことだが、だからといって、ソ連が対戦力攻撃力をあてにしたり、先制攻撃を計画したりしているというわけではない。

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それに、抑止力としてもICBMがSLBMより決して劣らないことは簡単に証明できる。ICB

M発射基地との連絡は、潜水艦との連絡よりはずっと確実である。ICBMを攻撃することは、相手の領土を攻撃することであり、全面核戦争を開始するのに等しいであろう。先制攻撃を計画する者は、この事実を無視するわけにはいかない。

ICBMの脆弱性が高まれば、警報即発射戦略(敵のミサイルが発射されたという警報を受けると、敵ミサイルの飛行中に自分のミサイルを発射する戦略)をとることができる。先制攻撃を計画する国は、敵国が警報即発射戦略をとる可能性を否定できないので、このことによっても抑止力が強まることになる。

SLBMと戦略爆撃機の能力については、先に触れたアメリカの考え方とは異なる評価を下すことができる。たとえば、紛争が通常の非核戦争の形で始まった場合、敵のICBMを攻撃するよりは核搭載潜水艦に攻撃を集中するほうが安全と思われる。なぜなら、潜水艦攻撃は敵の領土を攻撃せずにすむからだ。

もう一つ問題がある。つまり戦略爆撃機が4警戒態勢に入った場合,基地への攻撃を避けるために避難しているにすぎないのか、それとも、命中精度の高い巡航ミサイルを発射する前線に近づきつつあるのかを、どうしたら敵側に区別させることができるだろうか。ちなみにアメリカには、戦略爆撃機に対するこの種の計画が実際にある。

こうしたシナリオは、アメリカの核戦略の考え方を念頭においており、ソ連の核戦略を念頭においたものではない。ソ連は、第一撃や限定核戦争という考え方を反道徳的であるばかりか、まったく非現実的だと考え、そういう考え方を拒否している。

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永遠に続く追いかけっこ

また私は個人的に、時間という要因が最も重要だと考えている。レーガン大統領自身もユーレカ大学での演説で、アメリカ提案に基づいて合意を達成するためには何年もかかることを認めている。それでは、それまでの間に何が起きるのか。無制限な軍拡競争を放置しておこうというのだろうか。

- レーガン大統領は、SALTII条約の条項を順守するといっているが。

A 結構なことのように聞こえるが、それならなぜ条約自体を批准しなかったのか。しかしまたSALTII条約には、戦略上決定的な意味を持ち、きわめて危険な軍事計画でありながら、規制対象にはなっていないものも幾つかあることを忘れてはならない。アメリカはこのような軍事計画を推進するため全力をあげており、こうした状況がこのまま続くなら、ソ連としても、何らかの対抗措置をとらざるをえなくなるだろう。

ブレジネフ書記長が八二年六~七月の第二回国連軍縮特別総会に送ったメッセージのなかで、ソ米両国が交渉中は戦略核兵器を凍結するよう提案し、全核保有国に対し、ソ連にならって核兵器の第一使用放棄を宣言するよう呼びかけたのは、まさにこのような理由からだった。

このブレジネフ提案が実現すれば、問題点が解決し、真剣な交渉が始まる可能性が開けるばかりか、緊張を緩和して交渉の雰囲気を改善するのに役立つであろう。しかし残念なことに、アメリカはきわめて否定的な射応しかしなかった。

- しかし、アメリカはその理由として、ソ連が軍事優位に立っていることを挙げた。

A アメリカが主張しているのは神話にすぎない。すでに論議したように、アメリカの本当の動機はまったく別のところにある。アメリカはまず自分たちの軍事優位を実現したいと考え、それまではソ

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連との真剣な交渉に応じたくないのだ。「力の立場からの交渉」をしたいというわけだ。このことを率直に認めているアメリカ人は多い。

しかし、弱い立場から交渉に応じてもよいという者がいるだろうか。ソ連は再び均衡を実現するため懸命になり、米国防総省に不快感を起こさせることにならざるをえない。こうして、この追いかけっこは永遠に続くか、もっとありそうなのは、野放しの軍拡競争の果てに軍事対決が避けられなくなることである。

ゼロ・オブションは均衡を崩す

- ジュネーブで行なわれているもう一つの交渉であるINF削減交渉でも、両国の立場は

依然大きく隔たっている。レーガン大統領は、米ソ両国がすべての中距離ミサイルの配備を差し控えるとの「ゼロ・才ブション」を提案した。ソ連はこの提案を絶対に受け入れることができないと拒否している。

A それは当然である。戦略兵器交渉の場合とまったく同じように、ソ連は中距離核戦力でも一方的削減を迫られているからだ。

すでに述べたように、「ゼロ・オプション」提案によると、ソ連はすべての中距離ミサイル、つまり新型のSS20と旧型のSS4、SS5を廃棄しなければならない。ところがNATO側は、イギリスフランスの核戦力とアメリカの現存する前進配備核戦力はそのままにしておいて、西ヨーロッパへの新型ミサイル配備計画だけを中止すればよい。

ヨーロッパの中距離核戦力は大まかな均衡を保っている。ゼロ・才ブションは、この均衡をNATOに有利な方向に大きく崩してしまう。また、アメリカが海上発射巡航ミサイルを欧州の周辺海域に配

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備する可能性も残っているが、実際にそうなると、NATOはさらに有利になる。

最後にもう一つ大事なことを付け加えれば、レーガン提案が極東地域の核戦力も一方的に削減するようソ連に求めている点は、絶対受け入れるわけにはいかない。極東地域の核戦力は別の問題である。この問題で交渉はすべきだが、ーロッパの戦略的均衡とは関係がない。

- とにかく、ヨーロッパは核兵器だらけだ。

A その通りだ。だからソ連はヨーロッパを非核地帯とするのに賛成している。中距離ミサイルも戦術核も含めたあらゆる核兵器を、相互主義の原則に基づいてヨーロッパ大陸から撤去すべきである。しかし、西側には、この本当のゼロ・オブション提案に直ちに応じる用意がないので、ソ連は中距離ミサイルをまず一九八五年までに現在の三分の二に削減し、さらに一九九〇年までに現在の三分の一に削減するという二段階方式を提案している。

ヨーロッパから撤去するミサイルの大部分は廃棄するが、その残りはウラル山脈の東側に移転する。ウラルの東側からではミサイルは西ヨーロッパに届かない。またソ連提案には、順守状況を検証するための条項も含まれている。

- ウィーンで行なわれている東西間の中部欧州兵力削減交渉(MBFR)はどうか。

A この交渉はこれまで長い間、行き詰まったままだ。ソ連は局面を打開するために一九七八年六月の時点で、西側の立場にかなり歩み寄る提案をした。その提案は西側の代表からも非常に建設的だと称賛された。

その後、ソ連はヨーロッパの通常戦力について、戦車一千台と兵力二万人を一方的に削減する措置をとった。また、一九八〇年夏に東側諸国は、アメリカが兵力を一万三千人削減するなら、ソ連はもう二万人削減するとの新提案をした。八〇年秋にもワルシャワ条約機構諸国は前向きの提案をしたが、

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NATO側はこたえようとしなかった。

- ワルシャワ条約機構軍の兵力についてはさまざまな見方がある。NATOは、ワルシャワ条約機構軍が公称を一五万も上回る兵力を持つとみている。兵力数について双方の主張にこんなに差があるとすれば、合意は達成できないのではないか。

A まず、兵力については相手側のいう数字をそのまま受け入れるしかない。NATO側は一九七三年以来、合意達成の必須条件として、ワルシャワ条約機構軍の兵力数を提示するよう要求してきた。われわれは、NATO側のいう数字をそのまま受け入れている。

一般的にいって、この数字をめぐる駆け引きは、交渉を遅延させる口実でしかない。東西間の軍事力をどのようにとらえるかは,これまでつねに政治的武器として使われてきた。一九七七,七八年に、NATOが長期増強計画に対する支持工作を展開した際は、ヨーロッパにおけるソ連の通常戦力の優位なるものについて大騒ぎした。この計画がいざ採用されてしまうと、今度はヨーロッパ戦略核ミサイルに宣伝活動が集中している。

結論を先に言うなら、もしNATO、特にアメリカが合意成立を本当に希望していたなら、すでに合意は成立していたはずだと私は確信している。全面核実験禁止条約などについても同じことがいえる。

- 全面核実験禁止条約は、核拡散の問題に直接関係しており、この問題では米ソ両国の利害が特に共通しているのではないか。核兵器による破局を防止する立場から、この問題は重大だ。私は先日,実用可能な核爆弾の設計図を作ることに成功したプリソストソ大学の学生、ジ日ン・フイリッブスにたまたま出会った。

A この学生のエピソードは、核拡散の脅威がどんなに現実のものとなっているかを示す有力な証拠

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である。冷戦時代に戻ったような現在の情勢のなかで、この脅威は加速的に増大するだろう。核拡散防止は米ソ両国にとっての利益であるというあなたの見解は、まったく正しい。付け加えさせてもらうなら、ほかのすぺての国にとっても利益になるのだ。

現地査察問題でもめる理由

- 検証問題について先に言及したが、アメリカではSALTII条約にからんで検証問題が激しく議論された。明らかに一部の上院議員は、SALTII条約の検証手続きが信頼のおけない不十分なものだとして条約に反対した。なぜソ連は、現地査察を含め、もっと信頼できる検証方法に合意しなかったのか。

A SALTII条約についてアメリカ国内で本格的で真剣な議論が行なわれたころには、検証問題についての疑問はすでに解消していたように思う。条約の条項を順守しているかどうかは簡単に検証できることが明確になっていた。

問題の一つは、カーター政権が現存する偵察、情報収集手段によってソ連の軍事力についてどこまで知りうるかを、上院議員たちに十分かつ徹底的に説明しなかったことにちる.む。それというのも、アメリカではこうした問題が機密の保持を要する極秘事項とされているためである。しかし上院議員たちはSALTII条約をめぐる議論を通じて、極秘事項とは無関係の事実に少なくとも気付いたと思う。つまりSALTII条約がなければ、検証は容易になるどころか、さらに困難になるという事実である。

SALTII条約は検証方法について、特別な数量計算規定、相手国の検証技術手段に対する妨害禁止条項、ミサイル実験データの秘匿禁止などを足めている。また、条約は、相手国に条約違反の疑いが生じた場合に協議する特別委員会を設置することも規定している。こういう条項がなければ、状況

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はさらに悪くなっていたであろう。

検証問題についてのソ連の立場はどうかといえば、検証の方法と範囲は、個々の条約や協定で制限の対象となった兵器の性格や範囲と対応すべきだとの考え方に立っている。検証の目的は、合意が順守されているかどうかをチェックすることであって、だれかの好奇心を満足させることではない。つまり、ソ連は合意についての検証には応じるが、相手国の情報活動をしやすくするつもりはない、ということだ。

もう一つの重要な点は、軍備管理が進めば進むほど、さらに複雑な問題が生じ、制限内容が複雑になればなるほど、それだけ検証が果たす役割も大きくなるということである。

検証が十分かどうかを論じる場合、単に条約に違反する物理的可能性がちるかどうかという点だけでなく、不正行為をしようとする側にとって、はたして違反を犯すことが利益になるかどうかという点も、つねに考慮する必要がある。ささいな点で根手を欺こうとしても、すぐに発見されて国際的スキャンダルとなる危険を冒すだけである。軍事均衡に影響を及ぼすような大きな違反を隠し通すことはできないだろう。

SALTII条約の場合、自国の持つ技術的手段によって相手国が制限を順守しているかどうかを検証することはできる。条約によっては事情は異なる。たとえば、核実験禁止条約の場合、自国の技術的手段に加えて、相手国にいわゆる「ブラックボックス」と呼ばれる探知装置を設置することを認めている。これは現地査察の一種とみなすことができる。もし両国が全面完全軍縮条約に合意すれば、ソ連政府はこれまで主張してきたように、現地査察を含めどんな形式、方法の検証にも応じるだろう。

ここで付け加えれば、ソ連は原則として現地査察を否定してはいないが、専門家によると、現地査察は検証の手段としては理想にほど遠いということである。特に時間がきわめて重要な要因となる場

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合など、技術的手段による検証のほうが有効な場合も多い。また、現地査察でも検証できないこともある。

- しかし、どうして現地査察の問題が、これほどの論議の対象となっているのか。

A 軍備管理の進展を妨げようと思う者は、この問題を持ち出せば容易にその目的を果たせるからだ。この手口は、相手方に受け入れられないことがはっぎりしている要求を突きつけるということだ。そうすれば一石二鳥で、つまり相手の意図に疑問を投げかけ.その一方で、自分のほうに合意を実現するつもりがないことをおおい隠せるわけだ。

また、現地査察は、だまされやすい一部大衆が非常に重要な問題だと思い込んでいるという意味で、軍備管理をめぐる問題のなかで独特のものだといえよう。現地査察問題は、軍備管理の大衆的側面とでもいえるだろう。

目際的容疑者に甘んぜず

- ソ連が秘密保持に腐心していることは常識であり、西側でに、ソ連は一般的にあまりにも秘密主義と考えられている。このため、外界に対するソ連の偏執狂的な態度なるものについてのさまざまな話が、もっともらしく取りざたされるばかりでなく、ソ連の意図や目的などについても疑惑を強める結果になっているが。

A そのような見方は、主として政治的思惑や陰険な宣伝の結果であることを、もう一度強調せざるをえない。この宣伝こそが、ソ連の「閉鎖社会」とは対照的に西側は「開放社会」だとの神話を作り出し、はぐくんでいる。

しかし実際には、アメリカを含めて西側は、一般にいわれているよりは閉鎖的だし、逆にソ連は開

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放的である。アメリカには、ソ連に対してだけでなく、一般市民や.時には議会に対しても秘密にされていることがたくさんある。これらの秘密を探ったり、公表したりしようとすれば,罰せられるし、最近はその罰則がさらに厳しくなっている。

他方、アメリカとソ連とでは、この秘密を保持するための規則などの点で確かに違いがあるし、多くの場合、ソ連のほうが厳格であることを隠すつもりもない。これには歴史的な理由がある。過去に何度も軍事侵略の目標になり、長い間、敵に事実上、包囲された状態にあったソ連では、何を明らかにし,何を秘密にしておくかについて.国民が用心深くなるのは当然である。

伝統的な行動様式は決して永久に変わらないものではなく、変わりうるものである。これは、いま話し合っている問題にもそのまま当てはまる。緊張緩和が進み.お互いの信頼が高まり、そして交流の範囲や、交渉の対象となる領域が拡大すれば、こうしたことはみな伝統的な態度に変化をもたらすことになる。この点については、今後の成り行きが非常に重要な意味を持つことになるだろう。

- 最近,二ューヨーク・タイムズ紙は論説欄に「ソ連を信用すべきか。答えはノーだ。なぜアメリカ国民が、わが国の軍人や政治家よりもソ連を信用しなければならないのか」という記事を掲載した。

A アメリカ国民が自国の軍人や政治家を信用するかどうかは、アメリカ国民の問題だ。西側専門家の間には、ソ連の条約順守状況をきわめて良好と証言している人が多いが、アメリカ人がソ連の言うことをそのまま信じてくれるとは思っていない。ソ米関係のこれまでの成果のなかで、お互いの盲目的な信頼の上に成り立っているものは一つもない。両国間の合意はすべて、相手が順守しているかどうかを検証できるようになっている。両国関係はすべて公開の場で進展してきた。

しかし、その一方で,節度を守る感覚を失って賦ならない。ソ連がある種の国際的な容疑者の役割

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[p. 279]

を甘んじて果たし、疑惑をかけられるたびに釈明し、受け入れるなどと思ってはならない。

アメリカが、本当の証拠がないのにソ連にどうしようもなく古めかしい非難を加え、なぜソ連を容疑者に仕立てようとしているのかは明らかである。非難、中傷をくり返せば、通常は非難する声のほうがこれを否定する声より大きく響き渡るものだ。しかし国際政治の世界でも、立証責任は訴えを起こした側、つまり非難した側にあるという、文明社会のルールと同じような原則がなければならない。

破壊するか、されるか

- 軍備管理、軍縮問題についての議論を締めくくるに当たって、この問題の将来はどうなると思うか。

A 軍備管理は、その財政的、政治的利益を別にしても、核戦争を防止する確実な保証を侮るために不可欠だと思う。

私は、政治家が先見の明を持ち、理性的に判断した結果として、軍備管理・軍縮を推進してほしいと考えている。両国が、軍拡競争のもたらす危険性と、軍縮のもたらす利益とを認識すれば、もっと平和な世界を実現するための最も近く最も安全な道が開かれることになる。破局の瀬戸際から退く道も開けるだろう。

歴史を振り返れば、狂気が一時的にせよ世界を支配し、その正体を完全にさらけ出してからようやく、理性がこれに打ち勝つことができた時代のあることを思い起こすことができる。このような状況は言うまでもなく限りなく危険であり、核時代においては、とうてい受け入れることはできない。

この時点で、私に将来の明確な予測をする勇気はない。両国がともに軍備管理・軍縮の道を進むことを希望する。しかし、ソ連側からみると、アメリカの外交政策、軍事政策の変更によって軍備管理

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[p. 280]

は困難な事態に直面しつつあるように思われる。この後ろ向きの流れを克服するため、あらゆる努力をしなければならない。

せんじ詰めると、問題は「われわれが核兵器を破壊するか、それとも核兵器がわれわれを破減させるか、そのどちらかしかない」という点に絞られるからである。


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