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Soren no tachiba. Detanto no hokani michi wa nai (The Sovjet viewpoint. No alternative to detente) (1983)

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Titelpagina van Soren no tachiba. Detanto no hokani michi wa nai (The Sovjet viewpoint. No alternative to detente)
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Soren no tachiba. Detanto no hokani michi wa nai (The Sovjet viewpoint. No alternative to detente)

(1983)–Georgi Arbatov, Willem Oltmans–rechtenstatus Auteursrechtelijk beschermd

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4 狂気の惰性

ーあなたは、軍拡競争が国家安全保障を強化するどころか、逆に安全保障を損なうと言ったが。

A軍拡競争の純粋に軍事的な側面については、すでに述べた。軍拡競争がもたらす経済的影響についても同様のことがいえる。軍拡競争は、経済から、つまり社会的、文化的分野から、ますます巨額の金を吸い取り、社会福祉をむしばんでいる。一家の守りを固めるために金をかけた結果、その家が

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滅びてしまうとしたら、そのような守りの強化には意味があるのか、というジレンマがここに生じている。兵器の増強や新兵器の開発が軍事的、政治的安定を覆し、国家の安全保障に新たな脅威になることは、すでに述べた通りである。

ー何か例を挙げてほしい。

MIRV、連鎖反応の火つけ役

A最も適切なのは雑MIRV(複数目標弾頭ミサイル)のケースだ。対戦力攻撃力が高まると、どのような問題が生じるかについては、すでに論議した。

ある国が先制攻撃で敵国の戦略核戦力のすベて、または大部分を破壊する能力を持つと、敵国は恐怖感や不安感を強める。そして、相手側に脅威を与える同様の対戦力攻撃力を持ち、先制攻撃を受けても残存できる新兵器を開発して、ミサイルをいつでも発射できる態勢をとろうとする。その結果、情勢はさらに不安定になる。

しかし、このような対戦力攻撃力は、弾頭数を大幅に増やさない限り確保することはできない。なぜなら、核ミサイルの精度や信頼性は一〇〇%とはいえず、相手のミサイル一基を破壊するには一個以上の弾頭が必要だからである。こういう事情から、MIRVが登場するまでは、情勢は安定していた。相手方が対戦力攻撃を確保しようとしても、相手方が増やすミサイルと同じ数だけ、あるいは少々少ない数でも、こちら側も増やせば、相手は対戦力攻撃力を持てなかったからである。

ところがアメリカはMIRVを導入して状況を一変させてしまった。当時、ソ連にはMIRVが一基もなかったので、アメリカはMIRV導入がどのような結果を招くかについて懸念していなかった。しかしソ連のMIRVが登場すると、アメリカは主力ICBMミニットマンの「脆弱性」について深

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刻な不安を抱きはじめ、ヒステリックにさえなった。

この米ICBMの対ソ「脆弱性」なるものがSALTII批准に反対するキャンベーソの柱となった。また、この「脆弱性」が、非常に危険で、両国の安定を乱す新しい戦略体系であるMXミサイルの導入-その配備をめぐってはなんとも風変わりなさまざまな方法が検討されたーの理由ではないにしろ、導入を正当化する口実となり、さらに弾道弾迎撃ミサイル〔ABM)規制問題でアメリカが方針を変える口実にもなった。言い換えれば、MIRVは、米ソ間の戦略的な安定を揺がす一連の連鎖反応の火つけ役をしたのである。

- 確かにアメリカの専門家の間には、ソ連ミサイルの投射重量が大きいため、一九八〇年

代を通じてMIRV化が続けば、ソ連ミサイルに搭載できる弾頭数が増えるという事実を指

摘し、米ICBMの脆弱性について懸念を深めている人が多い。この人たちは、少なくとも

MXミサイルが配備されるまでは、ソ連がかなりの優位に立つことになると言っている。

A すでに述べたように、地上配備ICBMの脆弱性は、ソ連の脅威や戦略バランス、それにSALTII条約批准などに絡んで自熱した論議の的となった。この問題が、これほど感情的な論議の対象に値するかどうかは疑問である。私はそれほどの問題だとは思わない。もちろん、これは素人としての意見であり、軍事専門家としての見解ではない。

- どうして、ICBMの脆弱性の問題を重視しないのか。

A この問題の中身を検討してみよう。MIRVが登場し、弾頭の精度と破壊力が高まったことで、ICBMは技術的にみて脆弱さを増しただろうか。もちろん、増した。アメリカが、この脆弱性を懸念するなら、MIRV化競争の火ぶたを切り、先に対戦力核戦略を採用し、弾頭の精度向上にも着手したのは当のアメリカだという事実を、思い出してもらいたい。

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しかし、ICBMの脆弱性が高まったのでソ連のほうが有利になった、という主張には同意できない。この主張は間違っている。新型のMK12A弾頭を搭載したミニットマンIII型ミサイルは、強力な破壊力を持つ対戦力兵器であり、このおかげで、将来はともかく、現在のところ、ソ連の戦略核戦力はアメリカよりも脆弱なものになっている。

将来についていえば、アメリカが一九八〇年代初期を特に危険な時期と考えていることは承知している。米上院外交委員会のSALTII批准審議の公聴会では、ソ米両国のミサイルの脆弱性について比較、検討した。その際に提示された推定数字によると、アメリカはソ連のICBMの六〇%を破壊できるが、ソ連はアメリカのICBMの九〇%を破壌できるという。

しかし、同時に公聴会の証言では、アメリカのICBMが、いわゆる「三本柱」〔アメリカ核戦略の三つの構成要素〕の一本にすぎないこと、またソ連が全弾頭の七〇%をICBMに搭載しているのに対し、アメリカのICBMには全弾頭の二四%しか搭載されていないから、ソ連と比べた場合、ICBMの重要性がはるかに低いことも強調された。したがって、相手の戦略核戦力を破壊する能力を比較するなら、一九八〇年代初めの時点で、ソ連はこの種の攻撃で戦略核戦力の二二%を破壊できるが、これに対してアメリカはソ連戦略 核戦力の四二%を破壊できる、と推定された(「SAlTII条約」、第九六議会アメリカ上院外交委員会公聴会、第三部、ワシントン、政府刊行物出版局、一九七九年、七五ページ)。

以上が双方の現有戦力下での情勢である。アメリカがMXを導入したとしても、アメリカのICBMの脆弱性が減少することはない。MXの支持者はあまり口にしていないが、ソ遠のICBMの脆弱性が増大するのである。

またアメリカが計画しているトライデントII型〔原潜発射ミサイル。射程約一万キロ、七弾頭〕やパーシングII型ミサイル〔中距離弾道ミサイル、射程干六百キロ〕などの新兵器もやはり、かなりの対戦力攻撃力

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を備えることになる(ちなみに、パーシングIIミサイルが西ヨーロッパに配備されると、ソ連のヨーロッパ地域目標についていえば、発射から到達までの警告時間はわずか五、六分になってしまう)。

ICBM胆弱論を疑う

ー言い換えると、アメリカのICBMへの「ソ連の脅威」論には根拠がないということか。

Aもしもソ連やその同盟国が攻撃を受けた場合、ソ連の戦略核戦力が報復として、アメリカにいわゆる「耐えがたいほどの損害」を与えることは疑いない。またアメリカのICBMのうち、一定数を破壊する物理的能力がソ連にあることも確かだ。しかし、アメリカも少なくとも同様の能力を持っている。したがって、この意味では、脅威はお互いさまである。

だが、相手のICBMを破壊する能力についていえば、アメリカの戦略計画は、この能力の対ソ優位を実現することを目的としている。ソ連が、アメリカのこの対ソ優位実現を阻止しようとすることは至極当然だが、アメリカはこれを好まず、「ソ連の脅威」なるものについて、またまた偏執狂的な発作を起こすことになるだろう、

ーしかしあなたは、ICBMの脆弱性がきわめて重要な問題であるかどうかについては疑

問がある、と述ベていたではないか。

A私がその面での専門家ではないと断わったうえでだが、その通りだ。しかし専門家の間には、脆弱性という考え方にさまざまな欠陥があることを指摘し、脆弱性を決定的に重要な問題とみなすベきでないと考えている人も多いことは事実である。たとえば、優に千ヵ所以上の目標を同時に破壊するためにミサイルを一斉発射する場合、きわめて複雑な技術的問題が生じる。こんな実験はかつてだれもしたことがないし、今後もすることはないだろう。

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まず第一に、実際に発射する場合、ミサイルはいつもの発射実験の時とは違ったコースを飛ぶので、このコースの違いがミサイルの精度にどのような影響を及ぼすかはだれにもわからない。次に、いわゆる「同士討ち」の問題がある。真先に目標に到達した弾頭が爆発すると、その衝撃によって後から飛んでくる弾頭が破壊されたり、コースを外れたりして、目標に到達できなくなるのではないかという問題である。

さらに重要なことは、専門家が指摘していることだが、仮に敵国の地上配備ICBMをすべて破壊できるとしても、それで敵国の戦略核戦力を完全に無力化することにはならないということである。地上配備ICBMのほかに、SLBMがあるし、戦略爆撃機もある。

SLBMは、実際どんな近代兵器の攻撃からも生き残れるし、戦略爆撃機はきわめて速やかに雌陸して反撃することができる。アメリカの三本柱の戦略核戦力のうち、このSLBMと戦略爆撃機という二本の柱は、核戦力の七〇%近くを占めている。ソ連の第一撃を懸念する人がいるならば、ソ連の第一撃を受けても、アメリカのこの二本の柱は無傷で残り、報復攻撃ができるということを忘れてはならない。

さらに、幾つか付け加えたいことがあるが。

- どうぞ。

A ICBMを破壊する攻撃についてのシナリオや恐怖の想定はすべて,相手方が攻撃を受けるまでは何もせず、攻撃されてはじめて、ハムレットのような立場に追い込まれ、一体どうべきか、そしてもちろん、生きるべきか、死ぬべきか、の問題にさいなまれるという前提の上に立っている。

しかし、敵国の数千の核弾頭が自分のほうに向かって飛んでいるという情報を聞いた政府や軍司令部が、対戦力攻撃か対都市攻撃かの見極めをつけるため、爆発するまで手をこまねいて待ち、それか

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らやおらどうすべきかという難問に取り組むとは、とうてい考えられない。

- ちなみに対戦力攻撃と対都市攻撃の違いは何か。

A 対戦力攻撃は、軍事目標、それも主として戦略核戦力を狙った攻撃であり、対都市攻撃は、都市や経済力の破壊を狙ったものである。

攻撃を受けつつある国は、その攻撃が対戦力か対都市かの判断をするために待ったりはしないで、直ちに報復攻撃に踏み切ると思う。その場合、報復攻撃の目標は、その時点までに全部空っぽになっているか、少なくとも、半分は空っぽになっている相手のICBMサイロに限定されるわけはなく、当然都市も含まれることになるだろう。こうしてミサイルの応酬は、お互いの対戦力攻撃に限定されずに、人類の歴史に終止符を打つ全面熱核戦争になってしまう。したがって、相手方のICBMへの先制攻撃を計画 する者は、こうした全面核戦争に発展する可能性だけではなく、その公算が非常に大きいことも、念頭におかなければならない。

この点が、そうしたシナリオを作る者の犯す誤算の核心部分である。敵のICBMを先制攻撃する決定は、まさに全面核戦争を開始する決意と同じことだ、と私は考える。もし抑止力が機能し、相手側の常識をあてにするなら、相手側もこのような戦争を始めようとしないだろうし、ICBMの脆弱性についての懸念は、その根拠を失うことになる。

もしも、相手側がいとも簡単に全面核戦争に踏み切ることがありうる、つまり国家としての自殺を図ることがありうると考えるなら、これは抑止力が破綻したことを意味するし、この場合、ICBMの脆弱性の問題はますますもって意味がなくなってしまう。こんな場合には、神に祈りをささげて、急いで核のボタンを押すしかないだろう。

こういう結論に達すると、専門家たち、少なくともアメリカの専門家の間にはきっと、懐疑的なほ

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ほ笑みを浮かべる人が多いにちがいない。しかし、私としては、ひし掛け椅子に座っているこうした戦略理論家こそが本当の脅威になりつつあると言いたい。この種の戦略理論家たちは、とうてい信じがたいシナリオを描き、それによって軍拡競争を推進し、世界の恐怖、不安定、緊張を増大させる口実を考え出すだけである。連中は、現実の政策についてこれっぽっちもわかってはいない。いわゆる現実政治がわかっていないだけでなく、人間の初歩的な心理さえ無視している。連中は、通常戦 争がどんなものかさえ知らない者が大部分なのである。

失ったカへの代償行為

- 戦略理論家にかなり悩まされているようだが、あなたの言うことが正しいとすれば、連中の脆弱性説は間違っているのだから、害もないということにならないか。

A 私は、キリスト教のバブティスト派が危うくアメリカの国教になりかけたとき、聖書の勉強を始めたが、旧約の伝道の書に次のような一節があるのをご記憶だろうか。そこには「知恵は戦いの武器にまさる。しかし、ひとりの罪びとは多くの良きわざを滅ぼす」〔伝道の書第九章一八節〕と書かれている。戦略理論家のシナリオは、新たな恐怖を生み出し、相互の信頼を損なう。そして新しい軍拡競争を刺激し、一触即発性を高め戦争の危険を増大させる。

- 戦略問題の論議を中断させてしまったようだが。

A 一般的にいって、抑止力に対する考えは、椅子に座ったこれらの戦略理論家と、政治家や分別のある軍首脳とではかなり違うようである。軍の首脳にとっては、自国の首都が壊滅する恐れがあるだけで、強力な抑止力となる。

この事実をかつて指摘したのは、でクジョージ・パンディだったと思う。ある国が、その一〇大都

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市を失うとしたらどうだろう。二ューヨーク、ワシントン、ボストン、シカゴ、サンフランシスコ、ロサンゼルス、ニューオーリソズ、ヒューストン、ミネアボリス、セントルイスが消えてなくなったら、アメリカはどんな状況になるだろう。

また同様に、モスクワ、レ二ングラード、キエフ、スベルドロフスク、バクー、タシケント、ミソスク、ドネブロベトロフスク、ゴーリキー、リガがなくなったら、ソ連にどうなるだろう。

こんな膨大な被害を正当化できる戦争目的などが、はたしてありうるだろうか。

両国が百の大都市を失うような事態を想定してみよう。理論的にいえば、たった潜水艦一隻でこれだけの被害を相手国に与えることができるが、両国がためこんだ核弾頭数は数千個に達している。にもかかわらず、一部の人たちは、核弾頭をもっと多く持ちたがり、最後の全面対決を日指して奇怪なシナリオを考え出そうとしている。

ーしかし、ソ連も事前に設定した目標とシナリオに従って、軍事計画と軍備を増強してい

るではないか。

A その通りだが、この相互作用についてはすでに述べた。アメリカが新たな動きをして先に進み、ソ連が追いつこうとするというバターンである。これは軍拡競争の狂気の惰性である。両国がため込んだ兵器は、どう考えても合理的に必要な量をはるかに超えている。軍拡競争に終止符を打たなければ、競争はさらに続き、戦争の脅威は高まるだろう。これに非常に遺憾なことだが、アメリカのやり方に対処するためには、ソ連には選択の余地がないのだ。

最近は、実際おかしなことが起きている。つまり、新兵器が開発、蓄積され、新たな戦争の準備が進み、戦争の可能性が高まっているが、こうした動きは、それぞれまったく違う口実をもとにして、まったく違う目的を念頭においているようだ。

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- どういうことか。

A アメリカが対ソ軍事優位を得ようと周期的に企てるのは、フロイト心理学でいう代償行為のようなものになっているのではないかという気がする。というのも、アメリカが近年、世界中の国々との関係で、全能の力を失ったという事実を痛感しているからだ。

- 水爆の父といわれているエドワード・テラー博士は一九八〇年に、核戦争が発生すれば勝者は絶対にソ連だろうと言い、「カーター大統領はどうやってソ連を阻止するつもりだろうか」と私に聞いたことがある。レーガン大統領についても同じことがいえると思うが。

A テラー博士の水爆生みの親としての気持ちは理解できる。テラー博士は、せっかく作った水爆が一度も使われていないことにいらいらしている。世界の現状についても、さまざまな点でいらいらしているようだ。脅しがきかないソ連という国があることとか、核戦争には勝てないとかといった事実が面白くないのだろう。テラー博士の場合は、残念ながらどうにも救いようがないと思う。

核戦争に対する正常な対応は一つしかない。つまり、どんな犠牲を払っても核戦争を防止することである。核戦争を憂慮するアメリカの医師グループは、核戦争がもたらす結果に医学的に対処することは、現在の医学の力の限度を超えている、と述べているが、まさにその通りだと思う。唯一の解決策は、ちょうど不治の病に対しては予防医学で対処するしか手がないように、核戦争自体の発生を防止することだ、とこの医師団は強調している。

外交政策の手段として核兵器を導入したアメリカは、この核時代の処世訓を周期的に避けて通ろうとしてきたが、現在もちょうどその時期に当たっている。

- アメリカ政府当局者によると、ソ連も防衛上必要な限度を超えて軍備を増強している。アメリカが懸念するのはまさにこの点なのだ。

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A ソ連は、戦略兵器、通常兵器の双方を持つアメリカと、ヨーロッパでのアメリカの同盟国であるNATO諸国、それにもう一つの同盟国である日本という、少なくとも二つの潜在的敵国に対処しなければならない。もしアメリカがソ連の立場におかれたとしたら、防衛上、必要な軍備をどの程度と認定するか、聞いてみたい。

一方でまた、ソ連はアメリカの軍備についてソ連側からみた評価を示して反論できるし、ソ連側の評価のほうが計算の根拠が明確だと思う。アメリカの軍事計画の規模と方向は、防衛上の配慮という点からは説明できないとの印象がソ連では強い。アメリカはソ連よりはるかに多く核弾頭を保有し、いまや対戦力攻撃力に重点をおいて戦略核戦力を開発している。

またソ連の国境付近に、攻撃型空母と大規模な水陸両用兵力を多数配備している。般論でいうと、アメリカが兵力の半分を海外に駐留させ、緊急展開部隊を組織しつつある点をみても、アメリカの軍事方針はアメリカが海外で軍事介入することもありうるし、核兵器の第一使用さえ辞さないとの考えに立っていることをはっきり示している。これはあまり防衛的な姿勢とは思えない。

何と言っても、アメリカが東西を海に、南北を友好的で、軍事的に弱い国にはさまれ、地政学的に比較的安全な位置にあることを考えると、なおさらその感を深くする。このように、防衛上の要件というものは、外から見る場合と内から見る場合とでは、つねに異なるものだ。つまるところ、だれでも自分はいい子で、他人に害は与えないと強く確信していられるのである。もっと一般的にいうと、仮に特定の国をやり玉に挙げなくても、この数十年間に世界中に貯蔵された兵器はあまりにも多すぎ る、ということを付け加えたい。これらの兵器は、防衛上、安全保障上の必要性をはるかに超えている。

だからこそ、ソ連は軍縮を提唱してきたのだ。また途方もない過剰殺戮能力について言うと、政治

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的意思さえあれば、超大国はこの能力を放棄することができる。少なくとも、これ以上の兵器製造を中止することは十分可能である。

SS20は近代化更新配備だ

- しかし、ソ連のほうが兵士も戦車も砲類も数が多いのではないか。

A ちょっと待ってほしい。ソ連の兵員数は、NATO諸国よりも少ない。戦車数ではソ連のほうがNATOより多いかもしれないが、NATOにはソ連よりも進んだ最新式の対戦車兵器がある。戦車数が多いといっても大したことはなく、ソ連の当局筋によれば、ワルシャワ条約機構軍の欧州配備の戦車は、補給所に貯蔵されているのを含あて二万五千台。これに対しNATO軍は二万四千台である(Whence the Treat to Europe 六九ぺージ)。

また砲類でもソ連のほうが多いというなら、西側の分析によっても、自走砲や戦術核兵器ではNATOが優位である。不均衡な部分があるのはもちろんだが、全体としてみれば、おおまかな均衡、対等性、同等性(その他どういう言葉を使ってもいいが)が存在する。このことは、ソ連だけではなく、西側の多くの専門家や政治指導者がくり返し確認してきている。

- 東西間全体としての軍事均衡のことをいっているのか、それともヨーロッパにおける軍

事均衡をいっているのか。

A 両方の均衡のことをいっている。もちろん、西側にはこの二つの均衡について違う見方もあるが、ブラウン前米国防長官やシュミット前西ドイツ首相、それにイギリスの国際戦略研究所などによる権威ある分析のことをいっている。

- その分析には、ヨーロッパに配備されているSS20などの核ミサイルも含まれるのか。

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[p. 247]

A もちろんだ。たとえば国際戦略研究所は、NATOがヨーロッバの中距離核戦力(INF)について決定を下した当時、欧州に核の均衡が存在することを確認している(エア・フォース、一九七九年一二月号、また『ミリタリー・バランス』一九七九~八〇年、国際戦略研究所、ロンドン)。またボール・ドーティ、ロバート・メツガーという二人の著名な専門家も、射程距離が六百キロ以上の「ヨーロッバ戦略」兵器体系についてはおおまかな均衡がある、と述べている。

- ソ連がソ連西部にSS20を配備したので、大騒ぎが起きていることはご承知だろう。なぜ、緊張緩和の成果があがっていた時期にSS20の配備に固執したのか。

A ソ連のSS20配備で西側が大騒ぎしていることはよく知っている。しかし、その理由は、これまでさまざまな「ソ連の脅威」について、あれやこれやと大騒ぎした場合とよく似ている。

つまり、このような大騒ぎは、NATOの新しい軍事計画を正当化するというもくろみから生じたもので、今回の場合は、アメリカのバーシングIIミサイルと地上発射巡航ミサイルの配備計画を正当化するためである。

SS20は、古くなったソ連の中距離弾道ミサイルと交代させるためのものだ。古いミサイルは西側ではSS4、SS5と呼ばれているが、二〇年前に導入されたのですでに時代遅れになつてしまった。

よく注意してほしいが、ブレジネフ書記長が、それこそ真剣になって説明したように、SS20の配備によって、ヨーロッバに配備されるソ連の中距離ミサイルの総数は増えるどころか、かえっていくらか減っている。なぜなら、ソ連はSS20を一基配備するたびに、古いミサイル一基ないし二基を撤

去するからである。

- しかし、NATO専門家は、SS20の導入を単なるミサイルの近代化とみなすことはで

きないと主張し、西側専門家の多くもこの意見に同意している。SS20は、性能などの点で

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上のクラスに属する新型ミサイルと考えられているわけだが。

A もしソ連が二〇年も前に導入して時代遅れになったミサイルを、新しくもなく性能も向上していないミサイルと取り替えたとしたら、西側の専門家は何と言うだろうか。

肝心なのは、SS20の果たす役割が何も変わっていないということである。SS20は、射程距離からいってSS4やSS5と同様に、アメリカには届かない。SS20は戦域ミサイルであって、戦略ミサイルではない。これは、アメリカが西ヨーロッバに持っている前進基地体系とアメリカの核同盟国であるイギリス、フランスが持っている多数のミサイルや核搭載航空機に対抗するためのものだ。

つまりアメリカは西ヨーロッバ諸国に核兵器運搬手段約千六百基を保有しているほか、長距離ミサイルを積んだ潜水艦を配備、さらに地中海と北大西洋上の航空母艦に核兵器を搭載した航空機を待機させているが、そのいずれもソ連本土を攻撃する能力を持っている。

一九六○年代と七〇年代にイギリスは原潜を四隻建造し、SLBM六四基を配備、フランスは原潜五隻にSLBM八〇基のほか、地上配備ミサイル一八基を保有した。ソ連の中距離ミサイルは、これらの核兵器に対する抑止力の役割を果たすことを目的としている。

-NATO側も、バーシングIIと巡航ミサイルを配備する理由として同様の説明をしている。やはりミサイル近代化や均衡の回復のためといっている。

A 実態をよく検討すれば、同じ理由ではないことがすぐにわかるだろう。NATOの新型ミサイルは、新しい役割、新しい機能を果たすものだ。というのは、ソ連本土の奥深くにまで到達する能力を持っているからだ。現在用いられている基準にあてはめると、NATOに配備されるアメリカの新型ミサイルは、米ソの本土以外の戦域で使用される単なる戦域ミサイルではなく、戦略ミサイルでもあるのだ。同時にこの新型ミサイルは、SALT条約の規制対象に含まれていない。これだけでも新た

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な問題が生じることになるではないか。

-NATOのミサイル近代化計画が、米ソの戦略兵器交渉にも影響を及ぼすということか。

A その通りだ。SALTII条約によれば、ソ連は戦略核兵器の発射装置を二五〇基減らし、アメリカの発射装置と同数にするはずだった。アメリカは一九七二年以来、両国の発射装置を同数にするよう強硬に主張し、ミサイル一基単位とはいわないまでも、一〇基単位で論議を交わしてきた。

ソ連は当初、アメリカの前進配備ミサイルも勘定に入れるべきだと主張したが、最終的にはSALTII条約に合意した。ところが、アメリカはいま、SALTII条約の対象とはならない戦略ミサイルを新たに約六百基も配備しようとしている、ソ連にとって、ソ連の本土を狙うミサイルがどこから発射されたか、つまりモンタナ州やノース・ダコタ州からなのか、それとも西ドイッやオランダからなのかは、関係がないことだ。

実際には、〔西ドイツに配備される〕パーシングIIは、発射から目標到達までの警告時間がおそろしく短いので、ソ連にとっては条件がさらに悪くなる。

また、SALTIIIを交渉する場合、どうなるか。すでに双方が同意しているように今後の交渉では、戦略兵器の削減、いや大幅な削減さえ話し合うことになっている。しかし、ソ連は戦略兵器の数を減らすべきで、アメリカは、ミニットマンやSLBM、それに戦略爆撃機搭載巡航ミサイルの制限に同意するが、西ヨーロッパにはパーシングII、地上発射巡航ミサイルの配備を続けるというなら、ソ連はどのような態度でこの新交渉に臨めばいいのか。

- そういう点が、アメリカの新型ミサイルの生産と西ヨ-ロッパ配備に反対する主な理由か。

A もう少し付け加えたい。この新型ミサイル配備は、新たな軍拡競争の始まりを意味する。またこ

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[p. 250]

れらの新型ミサイルは、プメリカ本土の安全を脅かされることなく、ヨーロッパという地域的レベルでソ連との核戦争を戦う能力を持てるかのような幻想を、アメリカに抱かせることになり、情勢をきわあて不安定にする要因となる。

要するに、ヨーロッパにおける核抑止力を低下させるものであり、西欧諸国の安全保障を強化するような兵器ではないのだ。むしろその反対で、安全保障を損なうものだ。ウスチノフ国防相の指摘通り、新型ミサイルを配備する本当の理由は、「ヨーロッパの安全保障に対する懸念ではなく、アメリカが対ソ侵略をした場合に、米本土に対するソ連の報復攻撃能力を減少させることにある」。


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