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Soren no tachiba. Detanto no hokani michi wa nai (The Sovjet viewpoint. No alternative to detente) (1983)

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Soren no tachiba. Detanto no hokani michi wa nai (The Sovjet viewpoint. No alternative to detente)

(1983)–Georgi Arbatov, Willem Oltmans–rechtenstatus Auteursrechtelijk beschermd

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[p. 222]

3 経済をゆがめる軍事費

- 軍産複合体にますます強力になっている。

A その通り。軍と軍事産業はアメリカで最大の複合体となっており、数百万人を雇用して、年間二千億ドルを売り上げているほか、政権や議会にも利益代表をうまく送り込んで、社会のあらゆる分野を支配している。もちろんアメリカ国民はこのことをくり返し聞かされ、よく知っている。

しかし軍事産業は依然として、国家に貢献する愛国的な事業だとの評価を受けている。軍事産業の商品は、アメリカの安全保障そのものであり、軍事産業が利益をあげることは、アメリカの名誉であり尊厳である。軍拡競争によって軍事産業が得る金銭的利益についてとやかく言うのは、まともな市民のすることではないとされている。この利益の側面は表に出ることはなく、黙って見逃されている。

なぜなら、ジ目ン・ガルブレイス教授が指摘しているように、国民は「目先の経済的利益の代償として、アメリカが国家としての自殺を図りかねない危険を冒しているとは考えたくない」(Common Sense in U.S.-Souiet Relationsワシントン、東西合意に関するアメリカ委員会、一九七八年、四六ページ)からである。アメリカ人真相究明の調査をするのが好きな国民だと言われているが、軍事産業については、異議を唱える者はほとんどいない。

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「ミサイル・ギャッブ」論誕生のブロセス

- 軍事産業について調査が必要だという根拠は何か。

A あまりに膨大な金が絡んでいるからだ。それに、ロッキード事件のような直接の証拠もある。ロッキード事件は外国での不正支払いだったが、どうして国内では違うやり方をするはずがあるだろうか。兵器の価格の上昇ぶりをみてほしい。タイム誌によると、在来兵器の価格さえ、インフレ率を何倍も上回っている。

また軍事産業のやり方はきわめてえげつない。「国家安全保障」という名目を使い、政府、報道界との関係を利用して、無から「脅威」をデッチ上げている。あの「ミサイル・ギャッブ」がどのようにして生まれたかをご記憶だろう。

- どういう経過だったのか。

A 一九五七年に、ソ連が初の人工衛星スブートニクの打ち上げに成功したのに驚いたアメリカは、ガイザー委員会と呼ばれる専門家グルーブを設置した。委員会は、二、三年たてばソ連のミサイルがもたらす脅威はアメリカにとって「致命的になる」との報告書をまとめ、軍事支出の大幅増額と軍事計画の強化を勧告した。

当時のアイゼンハワー大統領は、この勧告に全面的には同意しなかった。しかし、民主党がその点を問題として取り上げ、一九六○年の大統領選挙でジョン・F・ケネディ上院議員はこの時とばかり、共和党は国防をないがしろにしている、と非難した。ケネディ議員は、選挙戦中にミサイル・ギャッブを埋めると数々の公約をしたため、大統領に当選してホワイトハウス入りした際に実情を知ったあとも、ミサイル戦力を急速に増強する計画をそのまま進めた。

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[p. 224]

- ミサイル・ギャッブはまったく存在しなかった、というのか。

Aギャッブはあったのだが、正反対のものだった。アイゼンハワー大統領の科学技術担当顧問だったジョージ・キスチャコウスキーは「実際には、アメリカのほうが有利というのが、真のミサイル・ギャッブだった」(前掲書、五九ベージ)と後に証言している。

- このミサイル・ギャッブは例外的なケースではないのか。

A 私が知る限り、これは例外ではない。ニセの「ソ連の脅威」によって国民をだまし、おびえさせるため、どんな政府機関でも意のままに操れるきめ細かな機構が活動している。

たとえばリチャード・ヘルムズは最近出版した本のなかで、CIAが国防総省から執拗な要求を受け、どのようにしてソ連のミサイルについてのあからさまな偽情報を作り上げたかを記している。この偽情報は、ソ連のSS9ミサイルが一九六〇年代末期にMIRV化していたという内容で、この推測はすぐに、完全に間違いであることが判明した。

さらに、SALTの進展を妨げようとして行なわれたさまざまな情報漏洩など、この種の話は幾らでもある。これらの事実は、「ソ連の脅威」という幻影がアメリカの軍事費を決定する過程や軍事計画の一部として、いかに深く組み込まれているかを示している。

- こうしたことはみな、権益集団の利益と政治的計算がもとになっている。

A それに国民に対するごまかしもある。海外で起きていることについて国民をだまし、国民に膨大な軍事費を負担させ、さらに必要もないのに、アメリカを危機や外国との紛争に巻き込んでいる当の連中は、どういうわけかこれまでまったくその責任を問われていない。

それどころか、一九五〇年代末や六〇年代、七〇年代など、軍事問題について重要な長期的決定が下された大事な時期に、決まって国民を誤った方向に導いたグルーブの一部の人たちが、現在でも活躍

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している。この人たちは、最も権威ある人物、国民や為政者が耳を傾けなければならない「有識者」とみられている。なかには、レーガン政権内で高い地位を得ている人も多い。

さて、私は歴史上の出来事の背後に陰謀があったとする説を信じない。大惨事の真の原因がすべて陰謀だったと説明する人たちがいるが、私はそうではない。しかし、「ソ連の脅威」なるものの神話と軍拡競争については、その背後に一つの陰謀があるか、数々の陰謀の網が張りめぐらされていると確信している。

ソ連に軍産複合体はあるか

- メリカに約三〇年間生活してみて、この国の軍事関連部門に絡む利益が確かに巨大なことがよくわかったが、ソ連にも軍拡競争で決定的な役割を果たしている軍産複合体が存在するのではないか。

A アメリカとソ連とでは事情が非常に違うから、同列に考えるべきではない。それに、本格的な軍拡競争をするには、軍産複合体が一方の側にだけあれば十分である。第二次大戦の終結以来、軍拡競争の各ラウンドの火ぶたを切ったのは、つねにアメリカの軍産複合体だった。

- アメリカの軍;産複合体とソ連の軍事産業を同列視しようとするのがなぜ正しくないのか。

A もちろんソ連にも軍部はあるし、防衛産業もある。しかし、ソ連の防衛産業は利潤を求めて操業してはいない。したがって、西側諸国の軍事産業の特厳である膨張主義的衝動がない。それに、西側諸国では経済の需要不足の問題を軍事支出で乗り切ろうとしたことが一度ならずあったが、ソ連経済は、そうした景気上昇策をとる必要もない。

- それでは、ソ連で戦車やミサイルが製造されると、誰の手に金が入るのか。

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A 労働者、技術者、工場管理者、設計者らである。戦車やミサイルを設計し、製造した人がみな給料を手にすることは間違いない。よく働けばボーナスももらうかもしれない.。

重要なのは、トラクターや刈り取り機、コンバイン、あるいはエネルギー生産や字宙の平和探査のための高度技術製品を作っても、同様の給料をもらえるということだ。それにソ連には失業者がいない。それどころか、つねに労働力不足に悩んでいる。また工場には遊休設備はなく、機械や設備も不足している。だから、ソ連は国内の需要を満たすために増産しなければならない。したがって、ソ連の防衛産業を転換して民需品の製造に切り替えても、ソ連全体にとって有益なばかりでなく、損害を 受ける者は原則的にはだれもいない。

実際、現在でさえ、ソ連産業の防衛部門はかなりの民需品を製造している。一九七二年に当時のブレジネフ書記長は、ソ連の防衛産業の生産高の四二%は民需用に向けられていると言明、さらに一九八〇年秋には、防衛産業の管理者たちに対して、消費物資を増産するとともに、防衛産業の研究・開発施設を、もっと民需部門のための新技術開発に振り向けるよう呼びかけた。

- 現在の東西両陣営の軍事支出を比較する数字はあるか。

A もちろん。公式発表によるアメリカの軍事支出は、一九七八~七九会計年度の一二七八億ドルから八一ー八二会計年度には二千億ドルに増えた。レーガン政権は八二~八三会計年度には二千六百億ドルを要求している。これに対し、ソ連の軍事支出は一九七八年が一七二億ルーブル(二四六億ドル)で、八二年度の軍事予算は一七〇億五千万ルーブル(二四三億ドル)である。

- そんなに大差があるとはとても思えない。ソ連の軍事費について西側ではかなり違う数字が取りざたされていることはご承知だろう。

A ソ連の軍事費の詳細な内訳は公表されていないので、この違いについては一般的な説明しかでき

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ない。

アメリカの軍隊は志願制だが、ソ連は徴兵制である、アメリカでは有能な人材を軍隊に引きつけるため、兵士にかなりの給料を支払わなければならない。アメリカの軍事費の約半分は給料など人件費である。アメリカの兵士は月に三百ドルとか五百ドルの給料を受け取るが、ソ速の兵士はたばこを買えるぐらいの金しか支払われない。また、徴兵制では市民が物質的報酬を求めるためではなく、義務として兵役に就くので、軍隊での生活も志願制の軍隊と比べた場合、かなり質素である。またソ連の 産業は、製品の価格を勝手に値上げすることは許されないので、これも一つの要因として指摘しておきたい。

-CIAは現在のソ連の軍事費を千八百億ドル台だと推定しているが。

Aそれは、いわゆる「ドル・モデル」に基づいて算出されたものだ。デトロイトの戦車製造会社にソ連の戦車についてのデータを示し、同じような戦車を製造するにはどれぐらいの費用がかかるかを照会してはじき出した数字だ。

- デトロイトの会社に?

Aフリント〔米ミシガン州〕でもどこでも、アメリカの戦車製造会社ならよい。そして、この見積もり額に、CIAが推定するソ連の年間戦車製造台数をかけると、ソ連の「本当の」戦車製造のための軍事支出額がはじき出されるという仕組みになっている。

しかしこの計算では、ソ連の戦車を作っているのはアメリカの製造会社ではない、という事案がどういうわけか忘れられている。同様の方法で、ソ連の兵力とCIAが考える兵員数に、アメリカの将兵が受け取る給料の額をかけると,またもう一つの数字が出てくる。議論を進めるために、東西の軍事費についての西側の推定額.それも相当歪曲されているものを利用しても、アメリカやNATOが描

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きたがる恐ろしい構図は浮かんでこない。

一例として、ロンドンの国際戦略研究所の軍事費についてのデータを見てみよう。同研究所が毎年発行する「ミリタリー・バランス」は、いま述べたような計算方式に基づくデータを使用しているが、一九八一年版によると、一九八〇年にNATO諸国は軍事目的に二四一〇億ドルを支出したのに対し、ワルシャワ条約機構諸国は一六四七億ドルである。NATO諸国の方が一・五倍近くも多く支出している。また、東側のほうが兵員数も少ない。

ソ連の公式数字によると、アメリカを含むNATO諸国の正規軍兵力は四九三万三千人。これに対し、ソ連を含むワルシャワ条約機構側は四七八万八千人だ〔Whence the Threat to peace モスクワ、一九八一年、七べージ)。日本と中国の兵力はこの数字には含まれていない。また国際戦略研究所の集計によれば、核戦力ではNATOが、ワルシャワ条約機構側の二・二倍の核弾頭を保有している。

さらに東西両陣営がとろうとしている政策の方向についても著しい差がある。アメリカとNATO諸国は、今後、何年間も軍備を着実に、大幅に増強しようと計画しているのに対し、ソ連はこれまでのところ、それに追随してはいない。

多くの場合、ソ連に対してきわめて不公平な方式で算出された西側の数字を使った場合でさえ、双方の軍事力の実態はこのようなものである。この数字が示すようにソ連は不利な立場にあるが、それでも、東西の軍事力は大まかには均衡していると考えている。アメリカ国防総省も、進んで宣伝してはいないが、米ソ軍事力が均衡している事実を認めている。

一九八一~八二年会計年度予算のために議会に提出された国防報告は「アメリカが優位を保っていた時代が去ってすでに久しいが、その代わり現在は均衡〔アメリカの劣勢ではない)が存在し、米ソの保有する戦略核戦力はほぼ同等である」(一九八二会計年度国防総省年次報告、四三べージ)と述べている。

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失業するか、兵器をつくるか

- 資本主義経済では、発展するためににつねに軍事費を支出する必要がある、とあなたは言ったが、米ソ両国はともに軍事費削減に努めなければならないという主張と矛盾するのではないか。

A 私は、軍事費が経済の新たな需要を生み出すために使われると述べたが、こういう軍事費の使い方は、経済にとって必ずしも好ましいこととはいえない。

軍事ブームは、経済の一部門、つまり軍事産業の活動を一時的に活発にするという意味では「効用」がある。経済全体に対する短期的な「波及」効果も生じるかもしれない。こうしたことから本当の利益が生まれるとすれば、それを得るのは兵器製造会社である。しかし、経済全体はこの即効薬によって悪影響を受け、経済の根本的な問題は悪化し、長期的な見通しはさらに暗くなった。

経済が軍事産業に依存した場合の弊害について、アメリカではベトナム戦争のころから認識されるようになった、とソ連の専門家は考えている。一九六〇年代末にアメリカで行なわれた論争の結果、膨大な軍事費でアメリカ経済が破滅しかかっているという事実がはっきりしてきた。戦時予算はインフレをあおり、世界市場でのアメリカ企業の競争力を損なった。

アメリカの実業家の間には、日本や西ドイツの企業がアメリカ企業との競争で勝つようになった理由の一つは、ベトナム戦争時の異常な予算配分にあった、と結論づけている人が多い。またソ連の専門家は、膨大な軍事費を支出した場合、ほかにも悪影響があることにアメリカ人の一部が気づきはじめていると指摘している。

- 具体的にいうと、どのような悪影響か。

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[p. 230]

A ここ数年、アメリカ人は、科学上の発見や技術革新の面で、アメリカがほかの一部の国に後れをとりばじめた、と不満をもらしている。アメリカの最も優秀な頭脳が軍事産業に吸い上げられ、使い捨てにされているのがその原因の一つだと考える人もいる。アメリカの技術者の三分の一ないし五分の二が兵器産業で働いているが、これは頭脳の無駄遣いである。インフレが軍事支出と関連していて、軍拡競争がインフレに大きな役割を果たしていることを理解する人がどんどん増えている。

レーガン政権のアメリカ再武装計画を経済的側面から分析してみると、軍備増強はアメリカの抱える経済問題をさらに悪化させる恐れがあるという見方を強めるだけである。たとえば、データ・リソーシズ社のジョージ・ブラウソ副社長は、一九八一年一〇月に上下両院経済合同委員会で、同社の分析によると、レーガン政権の軍備増強計画が財政制度ばかりか、アメリカ産業の生産力にもひどいひずみをもたらすことになるだろう、と証言した。

また全米ビジネス・エコノ、ミスト協会のキャスリン・アイクホフ会長によると、アメリカの経済は、民間部門の拡大と近代化のために膨大な投資をして初めて、諸外国との競争激化に対抗できるようになるが、こうした努力は軍備増強計画によって事実上、妨げられているという(ワシントン・ポスト、一九八一年一〇月一八日)。

またアメリカの労働界では、軍事産業の雇用創出に対する見方が変わりつつある。軍事産業は集中的な労働を必要としなくなってきているので、同じ額の金を注ぎ込むなら、軍事生産部門ではなく民間の生産部門に向けた方が雇用が増大するとの認識が労働界に広まりつつある。

- そういえば、オランダのアムステルダムで中性子爆弾に反対する大集会が開かれていたとき、カリフォルニア州のリパモアでは子供たちが、父親が中性子爆弾を生産する施設で働いているというので、中性子爆弾製造を支援するスローガンの入ったTシャツを買っていた

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[p. 231]

ことを思い出した。

A 殺人兵器を作るか、それとも失職して飢えるか、というジレンマに立たされたら、それは悲劇である。

確かに、職に就けるかどうかは国防総省の政策次第という地域がアメリカの各地にある。しかし先に述べたように、同じ金額なら軍事産業より民間部門に没入したほうが雇用が増大するという事実はよく知られるようになってぎた。軍事産業で働く労働者が組織する一部労組が、軍事産業を平和的な民需物資の生産に転換する要求を支持しているのも、こうした理由からである。

一般市民の間には、軍国主義に代わる政策を求める気持ちもかなり存在すると思う。もちろん、一九八〇年代に入ってアメリカの外交政策が変化したため、このような草の根の市民感情は、以前よりも目立たなくなってきている。軍事中心の経済体制を平和的な方向に転換せよと主張することは、現在のようにアメリカが再び戦争への道を歩みはじめている際には、非愛国的態度とみなされることになろう。しかしこのところ、反軍国主義が新たに復活してきた。

- アメリカの軍事費を膨大ではないと主張する人はいないだろうが、GNPないし予算全

体に占める軍事費の割合は、たとえば一五年前より減少していることはあなたもご承知だろう。一九六〇年代末には、GNPや国家予算に占める割合は非軍事費より軍事費のほうが多かったが、現在は逆転している。また、現在の軍事費急増にもかかわらず、予算における軍事費の実質価値は、べトナム戦争前と同じである。

A その論法についてはよく承知している。

- それでは、あなたの考え方を聞かせてほしい。

A まず、GNPに対する比率から始めよう。近年のアメリカの軍事費はGNPの五ないし六%で、

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過去の九%とか一三%とかより比率が小さいことは確かだ。しかし、GNPの六%というのは決してはした金ではない。GNPの成長を考えれば、同じ一%でも非常に大きな差がある。六%となれば、言うまでもない。毎年毎年、国民総生産の六%が軍事費として無駄遣いされているわけだ。

予算をみれば、さらにはっきりする。予算というものは、必ずしもその全体でなくとも、国家的な問題を解決するために国家が投入する富を意味する。この国家的な問題には、軍事的な安全保障だけではなく、社会保障、保健、都市問題、環境保護、エネルギー、基礎研究などが含まれる。もし、こういう富の三分の一近くが軍事月的に使われるならば、いまあげた緊急の問題を解決する力は著しく弱まり、社会にとって大きな損失となるだろう。

社会政策後進国、アメリカ

- しかし、長期的に見た場合、予算の優先項目が変わったというのは事実はないのか。

A 現在、アメリカでは、軍事費増を予算上、優先する方向に逆戻りしつつある。仮に、一九七〇年代に定着した軍事費と非軍事費の率が維持されるとしても、社会対策費は十分で、軍事費は不十分、ということを意味しない。また、ベトナム戦争以前の水準と現在の水準を比べた場合、非常に誤った結論に達する恐れがあることはいうまでもない。というのは、ベトナム戦争前の期間は、決して「平常時」ではなかったからだ。

当時は、冷戦が最高潮に達した時であり、「ミサイル・ギャップ」による狂乱状態のなかで着手した戦略戦力の大増強計画を実施している最中だった。さらに通常戦力についても、二・五戦略、つまり二つの大きな戦争と一つの小さな戦争に同時に対処する準備を整えるという「柔軟反応戦略」に基づいて急速な増強を図っていた。

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また、このような比較をする場合、次のような事実も計算に入れることが重要である。それは、社会が必要とするものが増えるために、軍事費に対してはつねに削減を求める圧力がかかっていること、そして政府が社会の安定を望むなら、この社会の必要を無視できないという事実である。私がいう社会が必要とするものとは、エネルギー源の開発、環境保護、それに大多数の市民が直面している経済的な困難を助けるための社会福祉費などを指している。GNPが軍事費に食われる比率が、大きいか小さ いかの判断を下す際には、このような要因や圧力をすべて考慮しなければならない。アメリカが抱える国内問題を考えれば、その解決のためにありあまるほどの費用が支出されている、という印象は受けないだろう。

- しかし、社会関連支出が増えたのは事実だ。

A確かに増えた。これには、一九六〇年代のアメリカの社会的混乱が非常に重要な役割を果たした。人びとは街頭にくり出し暴動が起きた。六〇年代は初めから終わりまで社会的不安が続き、人びとにそれまでは耐えしのばなければならなかったことを、もう我慢しようとしなかった。

社会関連費の支出増に着手したのはジョンソン大統領である,確かに「偉大な社会」計画には美辞麗句がたくさん盛り込まれていた。ジョンソン大統領がこの計画で、アメリカの直面する社会問題の改善を呼びかけた際、個人的、政治的な利益を考えていたことも間違いない。しかし、これにはさらに深い動機があったように思う。鋭敏な政治感覚を持つ政略家としてジョンソンは、社会問題にもっと注意を払わなければ、国内不安が爆発しかねない状態になると見抜いていたに違いない。

- しかし、そのジョンソン大統領が数十万の若者をベトナムの泥沼に送り込んだのではないか。

Aそうだ。そしてベトナム戦争は「偉大な社会」計画を挫折させて,ジョンソン時代はまったくの

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混乱に陥った。予算の優先順位の変化について正確にとらえようとするなら、こうした点をすべて考慮に入れなければならない。一九七〇年代に入ると、社会関連費の予算増を求める声が着実に高まる一方で、ベトナム戦争と軍国主義に対する反対が強まり、アメリカ中、至るところでしばしば反対行動は大荒れとなった。

ニクソン大統領には、あまり選択の余地はなかった。どっちを見ても、軍事費を削減し、社会関連費を増大しなければならない情勢だった。

- しかし、現在はアメリカ全体のムードが変わってしまったようだが。

Aその通り。いま軍事費と社会関連費の比率を再び逆転しようという活発な動きがある。アメリカ政府は、軍事費増強に対する国民の反対の声を和らげるのに、少なくとも二、三年間、成功した。

しかしカーター、レーガンの再武装計画が進むにつれて、世論は「バターではなく、大砲」の政策に背を向けはじめた。途方もない軍備増強がアメリカ経済をひどく損ないかねないという疑念が深まっている。政府が国内問題をもっと重視すべきだという国民の声は弱まらなかった。以前から存在する問題が、依然として解決していないからである。

そのなかには、さらに差し迫った問題となったものが多いし、新しい問題も生まれている。アメリカ政府は、こうした国内問題に目をつぶることはできず、背を向けて逃げ出すこともできない。つまるところ、社会政策についていえば、アメリカは西側諸国のなかで依然として最も後れた国の一つなのである。

- しかし、政府がこういう社会問題を解決できるとは思わないというのが、現在のワシン

トンの風潮である。それがレーガン大統領が選出された理由の一つではないのか。

Aもしもアメリカの保守派が、国民の間にあるインフレ反対の声を、社会政策の転換に対する確固と

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した支持の裏づけと考えたり、また国民が一九世紀資本主義、ないし少なくともニューディール以前の資本主義に戻るよう保守派に求めていると考えたりすれば、これは大変な誤りだと思う。アメリカ国民は高インフレと重税に確かに怒ってはいるが、同時に政府が着手した特定の社会計画に対する支持は、七〇年代を通じて強まってぎている。

ここに矛盾があるとは思わない。国民はこう言っているだけなのだ。「政府は、市場における競争の論理が生み出した不公平や不公正を正す役割を果たす力がある。しかし、同時に政府は、財政をきちんとし、税金をもっと公平に負担させるべきだ」ということだ。これに尽きているのではないかと思う。アメリカ人は政府に、これまでよりさらに多くのものを期待している。いったん人にものを与えると、代償もなしにこれを取り上げるのは、きわめて難しいことだ。


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